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トーキングアバウト 青い鳥のタロット 『 XXI.The UNIVERSE 』

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XXI. The UNIVERSE -世界-

 

 

「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」のカードは、完成、成就、終着点、達成、結果が出る、完璧な調和といった意味をもつとされます。輪の中にいる人物は踊っていると言われ、カードの四隅には固定宮四サイン(牡牛座、獅子座、蠍座、水瓶座)のシンボルが描かれているものが多いようです。

カードナンバーは21、2+1=3のバリエーション。「III The EMPRESS 女帝」の3→「XII The HANGED MAN 吊られた男」の12→21「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」の流れです。

深遠な何かを示していそうな絵柄。「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」は、全22枚の大アルカナの最終カードですが(大アルカナ22枚には、0番あるいは番号のない「The FOOL 愚者」が含まれています)、製作過程では10番の「X Wheel of Fortune 運命の輪」を描いていたときに着想が得られたのだとか。その経緯を振り返っていただきましょう。

――たしか、川口さんは「X WHEEL of FORTUNE 運命の輪」と「XXI The WORLD(UNIVERSE) 世界」の描き分けに苦心されていたんですよね?

川口忠彦(以下、川口) 正確には、「運命の輪」のラフをみかみさんにお見せしたとき、「世界」と象徴性が重なりすぎているというご指摘を受けたんです。

三上牧(以下、三上)  川口さんのラフは、発展途上の10番目のカードにしては荘厳すぎる印象があって、「上がり!」感が強かったんですよね。「上がり」は本来最終、21番目の世界のカードなので……。もともと「運命の輪」と「世界」の構図やモチーフはかぶるところがあるんですが、運命の輪は車輪、世界のは車輪ではなく環です。
本心を言うと、運命の輪のラフは絵としてはとてもいいと思ったんです。でも、カードリーダーの一人として、使う以上はこのあたりも描き分けていただきたいという気持ちが強くて。完成した暁には自分で使いたいという欲がありましたからね。

川口 使い手のご意見は、作る側にとっても重要です。自分でもいいと思った絵を直すのは一苦労ですが、どの絵でもこうして制作過程でみかみさんとやりとりして揉んだことが、デッキを手にしてくださるみなさんにとっての価値になるはずなので。

――それで、「運命の輪」のラフに描いた要素を「世界」のカードに使うという英断を川口さんはされた……。

三上 「運命の輪」のラフ絵要素を「世界」に転用しては?と思ったもののさすがに私からは言えずにいたら、川口さんの口からその案が出たので驚いた、ということはトーキングアバウト「運命の輪」篇でもお話ししたとおりです。

――21番目の名称は、デッキによって「ワールド」と「ユニバース」の二通りがあるようです。一般的には「ワールド(世界)」が多いようですが、青い鳥のタロットではユニバース(宇宙)です。これはお二人のどちらのアイデアだったのでしょう?

川口 手許にあったデッキの21がthe world =世界ではなくthe universe=宇宙になっていてそのほうがしっくり来たので、まず僕のほうから21はthe universeで行きたいと打診してみたんです。

三上 私もどちらかというとユニバース派なので異存はなかったです。ユニバースという語自体には、ニューエイジ的な響きがあります。ワールドが天動説の平べったい世界観だとすると、もっと広い世界観を表すためにユニバースが採用されたとも考えられます。最初に言い出したとされるアレイスター・クロウリーさん(英国のオカルティスト、トート・タロットの作者)は、「次の時代に向かう最先端にいるオレ」というタイプだから、「ユニバース」を好んだのも肯けます。

川口 さらに、みかみさんと対話するなかで、自分が「神」ではなく「宇宙」に何かの理想を見ているらしいとわかってきて……。特定の神や宗教ではなく宇宙という神秘を信仰する感覚とでもいうのでしょうか。意識していなかったのですが、このデッキのほかのカードでも星空モチーフが割と出てきてるんですよね。それで最終カードのタイトルとしては「世界」より「宇宙」を採用したいと思ったというのもありました。

――「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」の絵柄について、みかみさんからはどのように説明されたんですか?

三上 まず、中央の金の卵型(楕円)の中に「完全な人」が浮かんでいますが、この人物は両性具有とされています。

川口 最初、この両性具有というのがイメージしづらく苦心していました。

三上 実際に絵にするとなると難しいですよね。「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」では、大抵女性っぽい人物が裸で立っていて、腰に巻いた布で両性具有をほのめかすような感じが多いですね。象徴辞典には、「その裸女は体の前を布切れか花輪で覆い、時に2本の棒、または1本の棒と袋またはオリーブの枝を持っている」とあります。この人物を囲む円は、葉で作られています。蛇の輪(ウロボロス、循環や永続性の象徴とされる)の場合もあって、そこから宇宙のイメージにもつながりますね。
いろいろな要素が描き込まれていますが、両性具有というのは超越的存在なんだとご説明したんです。

川口 そのあたりにヒントを得て、女性美をベースにしつつ、神的なプロポーションや顔の端正さでまとめていきました。

はじめは、髪の毛のないパターンで考えたんです。アンドロイド的な。「まさに超越美、なんという名案!」と思ったのですが、インパクトが強すぎて、このカードに求められるもの以外のパワーが出すぎていたので断念しました。

そう思ってみると、髪の毛がなくても成り立ちそうなキャラクターじゃないですか?

――そういうことだったのですね。ところでみかみさん、「世界」という概念をこんな絵柄で表すのは面白いなといつも思うのですが、図像的にはどう捉えたらいいんでしょうか。

三上 カードの四隅のエンブレムは占星術でいう固定宮の4星座で、左下から反時計回りに牡牛、獅子、蠍、水瓶です。このカードは、12時になると時計の長針と短針がぴったり合わさる感じに似ていますね。毎日同じ時間に2本の針は重なるけれど、日付はどんどん重ねられていく。ある種、刹那的な完璧性です。4つのサインのモチーフがまた時計盤みたいにも見えますし。歯車が噛み合って完璧な調和に至り、ワンサイクルが終わるような感じです。

川口 「一瞬の完全性でしかないけれど、それを一度体験することが重要」というみかみさんのフレーズにインスパイアされました。「宇宙の法則を人間界にちょっとだけ取り入れた瞬間」「何十もの均衡を保つ工夫がされて完成する一瞬の完璧性」という話が、自分がユニバースという概念で表現したかったこととぴたっとシンクロしたんです。

宇宙の絶対的な法則や運動と、現実のいたって日常の事柄が、全て和合する瞬間。太陽の光が手元の針の穴を通るとき。マクロとミクロがドッキングしつつ、終わりであり始まりでもある、というような意味も込めつつ描きました。

そして、一瞬の完璧性や特別感を表すために、このカードでは唯一、緑色を加えた5色を使っています。

――四隅の固定宮サインは象徴的に描かれているデッキが多いかと思うんですが、川口さんバージョンだと星座の図が描かれていてロマンを感じます。

川口 はい。ロマンのある表現をするというのは、いつもこだわっているところです。伝統的なカードを見ていて、自分が気になるところは積極的にアレンジを加えてきました。そのひとつですね。「UNIVERSE」にしたことでアレンジしやすかったです。

――ところで、青い鳥の数が気になるんですが……。解説書には「21羽の青い鳥」と書かれているのに、20羽しかいないようなんです。

川口 待ってました、いいご指摘です! 実は、この月桂樹の葉で作った輪が卵形になっていて、最後の1羽はこの金の卵という仕掛けなんです。このことはこのトーキングアバウトで初種明かしになるんですが……。

――謎が解けてうれしいです!

川口 三上さんに、月桂樹の葉の輪には青い鳥をあしらうと言ったところ、タロットでは数も象徴の一つで大切なものなので、鳥を描くなら21羽、人物の後ろから照らす光の筋はできたら7本に、と言われたんですよね。この光の筋も「X WHEEL of FORTUNE 運命の輪」のラフで使わず、このカードに持ってきたものでした。みかみさんとのやりとりから、光の線を描くことによって「上がり」のような神々しさを出せるとわかったので。「X WHEEL of FORTUNE 運命の輪」のラフの段階では苦しんだ甲斐あって、結果として満足のいくものに仕上がった気がします。

三上 そういえば完成時に、素敵な仕上がりで最後のカードにふさわしいけれど、輪の中で世界が完結したのだ光の筋が輪の外まではみ出ないほうがいいって言ったんですよね。外の世界は次元が違うから、光もそこまでは届かない設定のはずだと。

川口 でも結局ここは僕が押し切って、光輪は輪の中におさまっているし後光の光線がはみ出ているのは輝きの表現ですということでご了承いただいたのでした。

三上 私も、川口さんがわかっていて敢えてそうするのであればOKかなと思いました。だって、私が見てもこっちのほうが見た目がいい。象徴にこだわりすぎると美的なものが失われてしまう。そうするとやる気も失せるし、個性も出しにくいからあまりガチガチ言わないほうがいいかなーと思った次第です。

川口 実はこういう三上さんのいい塩梅のさじ加減によって、青い鳥タロットのバランスが決まっているんじゃないかと思うんですよ。

――絶妙なコラボレーションですね。

川口 今にして思えば、「運命の輪」のラフの段階で最終カードの「世界」の要素まで考えられたのは、結果としてよかったんですよ。
最終カードは、ゲームで言えばエンディングにあたります。ゲーム作りで学んだコツとして、エンディングはスケジュールの中盤頃に作っておくというのがあるんです。エンディングを作るときに作者が力尽きていたらまずいので(笑)。同じように、22枚目のカードに最後まで手をつけずにおくと緊張しすぎて失敗しそうだなと思っていたところ、そのイメージが行程半ばで浮かんできて、早めに取り組んだために落ち着いて制作できたんです。

三上 個人的にはバックに描かれた階段も好きです。これもたしか「X WHEEL of FORTUNE 運命の輪」からこちらのカードに持ってきたモチーフですよね?

川口 そうです。これは螺旋階段になっているんですよ。

三上 ひし形になっているために、この人物がせり出してくる感じがあります。

川口 何度かお話してきたように、このデッキでは22枚の絵がそれぞれ違う種類の面白さを持つように工夫しているのですが、ひし形を用いた構図はこの一枚だけです。

このひし形は単なる図形ではなく、星座で示された4元素を経由しながら、昇り続ける螺旋階段になっているんです。1周まわって元の出発点に戻っているようでいて、実は1階層上の段階に上がっているという大アルカナの愚者の旅をそのまま示唆できたのはとてもうまくはまった点ではないかと自負しています。一瞬の完璧性の表現であったり、大アルカナの最後のカードとして、絵的にさまざまな要素を両立して仕上げられたのはほんとに良かったなと思っています。

ときどき「どのカードが一番気に入っているか?」と聞かれます。

作っているときに一番気分が良かったのがこのカードで、それは象意のイメージが大きかったんだと思います。

「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」のお話、いかがでしたか?

さて。ゲームで言えばエンディングにあたる「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」までお話が進んだところで、次は振り出しに戻って、「The FOOL 愚者」のカードとなります。このトーキングアバウトで、敢えてこのカードを最後に残したのはどのような理由があったのか。最終カードの「XXI The WORLD(The UNIVERSE) 世界」から「The FOOL 愚者」へ、どんな旅となるのでしょうか。どうぞお楽しみに。

 

***

注 ウェイト・スミス版:ライダー社の、通称ウェイト版のこと。パメラ・スミスが作画を担当したことも考慮に入れ、この対談ではこのように表記します。

 

[取材・構成 藤井まほ]

 

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