トーキングアバウト 青い鳥のタロット 『 IX. The HERMIT 』

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IX. The HERMIT -隠者-

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トーキングアバウト青い鳥のタロット、今回は「IX The HERMIT 隠者」のカードです。このカードは「思慮深い行動」「中心から退き、考えに耽る」「熟考する」「精神性」「応用性」「探求」といった意味を持つとされます。9の数字は10の一つ手前、ひとつのサイクルをくくり統合する最終段階を意味します。ほかのデッキではどちらかと言えば、静的な印象の強い図柄が多いのですが、青い鳥のタロットでは少し違うような……。そのあたりの秘密も伺いましょう。

 

三上 数字の10は、2桁の数字の最初、1+0で新たな始まりを意味していると私はとらえています。1(魔術師)でスタートした自己を探求する旅が完結すると、10(運命の輪)で新たに物事が動き始めるんですね。9はその前の、一桁の数字では最大の数で、「IX The HERMIT 隠者」は最後の悩みどころ、最終的な確認作業という感じです。
この絵の隠者は外からのすべての影響を遮断し、カンテラを見つめ自分の内面と対話しています。孤独、自分哲学の探求。

 

――足元に山が見えていますよね。

三上 仙人のように下界から遮断された存在ということを象徴しているらしいです。

川口 「フードをかぶった老人がこういうものを持ってこんなポーズをしている」というのは自分を含め多くの人に見覚えのある魅力的な表現だと感じました。なので、そこは変えたくなかった。それに加えて「隠者が山の頂上付近にいること」「独りでいること」といった条件を押さえようとすると、基本の構成は従来のものにかなり似てきてしまいます。
そこで、取り組みとしてはまず、このメインである基本的な構成を「決定版」といえるぐらい理想的な形で絵に落とし込むべく力を注ぎ、そして次にウェイト・スミス版、マルセイユ版ともに無地で処理されている背景の空間を使って、個性的かつ視覚的に充実した表現をしようとしました。

 

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三上 この絵は一発OKだったような記憶があります。「IX The HERMIT 隠者」とか「XIII Death 死神」で川口さんの絵に何か注文をつけるなんて、釈迦に説法みたいな気がしちゃうんですよね(笑)。ただ、初稿の段階で色合いだけ、選んだんでしたっけ?

川口 空の色がピンクなのと、黒のがあって。後者のほうが隠者の孤独感や闇の中の光が際立つ感じが強調されていいとは思ったんですが、選びきれなくて三上さんにご相談したんです。

三上 ピンクのような暖色系の色には、情熱的で感情の起伏が激しそうなイメージがあるんですよね。そこが、思考の中に沈澱しているような隠者のイメージに合わないような気がしました。

川口 というお返事をいただいたので、黒バックで仕上げました。

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「姫君の青い鳩」より “ラーズグリーズ”

三上 背景の渦巻き状の雲がいいんですよね。まさにLocus of Control(コントロールの中心)――自分の中から外に散っていったものを戻すときの渦の中心みたいな感じです。「台風の目」のような。そして、隠者が持つこのカンテラの光が、次の「X Wheel of Fortune 運命の輪」の車軸となって車輪を回しているという流れがすごく納得いきます。

――このようにカードの意味を川口さんが解釈した上で具体的に絵柄として表現しているところが青い鳥のタロットの面白さであり、こうしてお話を伺っていてちょっと興奮させられるところですね。

川口 この雲は、絵としての面白さも狙ってます。先ほど言ったとおり、隠者のポーズ自体はある種典型的な絵柄だと思うんですよ。でも、このような渦巻き状の雲を背景に描くことで、絵に動きを持たせられたと自負しています。僕が、エースコンバット5の劇中童話『姫君の青い鳩』の中で描いた「ラーズグリーズ」のセルフオマージュ的な絵でもあります。

 

9hermbbt――この絵では、青い鳥がたくさん飛んでいますね。

川口 隠者がひとつの真理を探求している、その背景にはすでに無数の幸せがあるという「青い鳥のタロット」のプラス的解釈なんです。

――そうなんですね! 絵柄のことだけでなく、1枚ずつに描かれた青い鳥のことを伺ってみると、それぞれのカードの読み方にもいい意味で幅が出てくるような気がします。「IX The HERMIT 隠者」を見ても、隠者その人だけでなく、背景に希望が見いだす読み方も加わってきますから。

今回は、象徴の中心人物である隠者、背景の雲がもたらす動き、飛び回る青い鳥たち、それらが相まってこの「IX The HERMIT 隠者」を構成しているのだとわかって興味深かったですね。さて次回は、数字一桁の並びが終わって次のサイクルの始まり、「X Wheel of Fortune 運命の輪」のお話です。これは、人物モチーフではない初めてのカードですね。お楽しみに!

 

***

注 ウェイト・スミス版:ライダー社の、通称ウェイト版のこと。パメラ・スミスが作画を担当したことも考慮に入れ、この対談ではこのように表記します。

 

[取材・構成 藤井まほ]

 

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