本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は、年始のご挨拶としてお送りしたハガキの絵を軸に、少しお話をしたいと思います。
これまでは、あえてアナログに、ハガキを手にした人だけのお楽しみということにこだわっていたのですが、今回はより多くの方に楽しんで頂けたらと、画像にて紹介したいと思います。
“鳥王フェニクス”と題した、ドローイング作品です。
“鳥王フェニクス”
冥府の闇空
宵の国
鳥王フェニクス
幾千の光雛
我らは源
我らは闇
尽きることなく
湧くいずみ
降り注げ
わが子らよ
燃え盛れ
光よ
彼の地
彼の果て
彼の夢に
制作 2016.12 川口 忠彦
モンバルキャンソン紙・鉛筆・ClipStudio・Photoshop
表現したいことは全て絵と詩に込めてあるのですが、
今日は蛇足ながら、画作りや背景になる文脈のことについて、少し解説をしたいと思います。
以下は単なる私の方の考えであり、少しでも楽しみや味わいが増えれば、という意図のものです。
絵を見て下さった方が感じたことを、否定したり、修正を迫るようなものではまったくない、ということをあらかじめ申し添えておきます。
《画作り》
酉年ということで、“鳥”縛りで、フェニックスを題材に。
『闇を描くことで光を描く』という、絵画の王道スキームで組み立てました。
フェニックスは復活、不滅性、再生、存続を象徴します。
小鳥たちが育つための巣になろう木枝の冠、
我が子らを見る鳥王の慈愛の表情と、決して全体を明るくしないながら、階調のコントロールをデリケートに施し、強く温かい光を感じられるイメージにこだわりました。
鳥たちや各ポイントの構図上配置での視線の躍動感。
質感は、アナログとデジタルを行き来し、スモーキーな雰囲気が出るようにしました。
できるだけイマジネーションの濃い絵に仕上げたく、
そのようなことをいろいろ施しましたが実現できていますでしょうかね。
《制作背景》
2016年、世の中は悲しみや混乱、不安の拡大した年でありました。
日本が将来に抱える悩みも、相当に重い。
そんな中、失われた命や希望を補填し再燃させたい、
私たちはただ閉塞に向かう世界を生きているというのではなく、
尽きることのない力が何処かにあると心の隅に信じていたい。
そういうものがあるんだというヴィジョンを、ひとつの意思として、形にしておきたい。
振り返るとそんな思いがあったように思います。
見てくれた一人ひとりの方が、具体的にどんな状況にあるのか、私に知る由はありません。状況も、年齢も、全然違うことでしょう。
しかし、同じこの時に2017年を迎えるにあたって、
感じていることや負った傷、喪った悲しみや、
誰かや何かを大切にしたい気持ちなど、
通じ合うものも少なくないと思います。
共に迎える新年と、見てくれた一人ひとりを祝福したい。
ささやかな絵でありますが、
一つには、そういう想いを持ち。
そしてもちろんもう一つには、
ただただ「美しい絵を描きたい」という一心で、
持てる力を総動員して、仕上げた次第です。
改めましてみなさまの2017年を祝福いたします。
どうか良い年でありますように。
川口 忠彦
拝