川口 忠彦です。
本年も宜しくお願い致します。
本年も、年賀シリーズで絵と詩を創りました。
どうぞ御覧ください。
“『辺獄の廻廊』”
◇
子らよ!
勇敢であれ!
をのこもめのこも
猪(い)の子も人(と)の子も
等しく勇敢たれ!
前途は遠く そして暗い
然し恐れてはならぬ
恐れぬ者に道は開く
行け! 勇んで!
小さき者よ!
闇を裂け!
あまねくわが子らよ!
*中段 有島武郎「小さき者へ」より
2018.12 川口 忠彦
画用紙・鉛筆・ClipStudio
◇
“辺獄”というのは地獄の辺土(リンボ)とも言われ、
天国と地獄の間の、どちらでもない場所であり、
天国に入れない者、たとえば洗礼を受ける前に死んだ幼児などが行く場所と言われます。
私の年賀絵シリーズでは、
『生と死の狭間』『現世と来世の間』『天国と地獄の狭間』
といった世界を描き出そうと試みております。
特定の信仰があるわけではないので、聖書や仏教や神話、アニミズムなどさまざまなイメージの断片が登場します。
今回は、その“辺獄”と呼ばれる世界を通り抜け、天国や来世を目指す少女とうり坊たちが、壁に象られた『大いなる母』に出会い、その母たるものの願いと励ましに交差する瞬間のイメージを描きました。
《小さき彼ら》はきっと、大いなる母の声に背中を押され、首尾よく目的地にたどり着くことでしょう。
◇
われわれには「猪突猛進」という言葉に馴染みがある通り、干支である猪といえば、勇敢さの象徴のように捉えます。
いま現在、勇敢さはもはや、一部の男性にのみ要求されるものではありません。
一寸先の闇を切り裂き進んでいく勇気は、誰にも求められる世界です。
メディアは毎日不安を撒き散らし、
まるで正反対に、歯止めを失った商業主義は、
無責任なきらびやかさばかりを増していく。
その隔たりに気づいてしまえば不安は募るばかりです。
それでも、
『―恐れぬ者に道は開く』
のです。
他人との比較に意味はないし、
誰かに褒めてもらうために毎日があるわけでもない。
あなたの、私の、
それぞれの道を、信じるところを行く。
手探りし、迷い、躓き這いつくばりながらも、
傷を乾かし再び立ち上がり。
暗闇の中を共に…いや、それぞれ、お互いに。
勇んで行こうではありませんか。
◇
私は、自分が死んだ後に神様と会い、
「お前は何をしてきた?」
と問われたときに
「これとこれとこれを作りました」
と胸を張って言えるものをあといくつか残して死にたい。
そんな思いが、先日、湧き上がってきました。
しかしそれを生み出すのは、
いたって淡々と地味な毎日。
来る日も来る日も、人に会うこともなくアトリエに籠って絵や言葉と向き合い綴ること。
食べることと眠ることに気を配り、体調を整え続けること。
「本当にこれでいいのかな?」と迷い、
時に屈辱を味わい、やる気を失いかけても、
ひたすらその地味な毎日繰り返していくこと。
◇
それが私の『勇』と『気魄』です。
あなたはどうですか?
2019年という年が、
あなたの『勇』と『気魄』に満ちた一年でありますように。
まだまだ届かない。
だが、
まだまだやれる。
………だろ?
2019年1月1日
川口 忠彦
拝