十年越しのラブレター

こんにちは。

今日はクリスマスイブですね。

今年はたくさんの出会いや再会があり、特に12月には個人的にとても想い出深いことがあったので、記事を書きます。

感傷的な思い出話ですけど、クリスマスということで大目に見てやってください。

 

10年少し前、僕が30歳を少し過ぎた頃、ラブレターを書いた。

お相手は、当時中学生か高校生ぐらい。

 

寝る時間を惜しんで、推敲を重ね、想いを綴った。

 

渡した瞬間には、たしかに喜んでくれたように見えた。

けれど、あまり好みでなかったのか、何とも思われなかったのか、自分のあて先を書くのを忘れたのか、定かではないが、返事はもらえなかった。

 

ずいぶん長い間待っていた。

やっぱり返事は届かなかった。

 

本当は、返事とか、そういうなにかを期待するようなものではなかったのかもしれない。

けれど、何らかの心の触れ合いを期待していた僕の気持ちは翳り、次第に暗い闇に包まれていった。

こんな思いをするぐらいなら、あんなことしなければよかったと、悔やみさえもした。

 

何年も過ぎていった。

もう忘れて、すっかりつらくなってしまった思い出と決別して、新しい人生を送ることにした。

 

そうして、10年も経とうというころ、返事が届いた。

 

 

『あの頃から好きでした。いまも好きです。ずっと好きです』

 

 

そう書いてあった。

 

 

あまりにも遅れてきた返事に、戸惑い、不貞腐れ、歓喜した。

そして、僕はこの奇跡を、生涯大切にしようと誓った。

 

 

2003年、ヴィーナス&ブレイブスというゲーム作品を監督して、世に出した。

ターゲットは中~高生で、当時そのぐらいの年代だった彼ら彼女らは、いま20代後半から30代前半ぐらい。

そういう人たちがもうすっかり大人になって、いまは個展なんかに来てくれて、会うことができる。

日本全国遠くからも、駆けつけてくれる。これまでの空白を埋めるかのようにいろんな話をする。

 

「ファンを大切にしていますね」

 

と、言っていただけることが多い。

 

でも、誰だって、自分みたいにどうしようもない恩知らずでさえ、こんな出会い方をしたら自然と大切にするでしょう、と思う。

十年のお預けを食らって、ようやく返事をもらって、やっと再会できた相手を大切にしないわけがない。

自分の人生に起こった、ちょっとした奇跡です。

 

こんな風に、作品を好きだといってくださる方と出会い、言葉を交わせること自体、全然当たり前のことではなく、とんでもなく貴重な機会だと知ってしまった。

だから、ゲームのファンの方だけでなく、青い鳥のタロットの愛好家の方も、他のアートワークを好きでいてくださる方も、会えること自体がやっぱり奇跡的なことで、「好きでいてくれてありがとう」と伝えたい。

 

 

作品は、ラブレター。

発表は一対多数の形でするけれども、

私からあなたへ、一対一のごく個人的な手紙として、心と心を通わせようとして綴っている。

 

僕の作品は暗いから、いまがハッピーな人をさらに盛り上げるような彩りはない。

その代わり、心に傷があったり、闇の中にある人に、ほんの少しだけ寄り添い、照らすことはできるかもしれない。

 

「心をこめたラブレターは、きっといつか心に伝わって、何年経ったとしてもやがてめぐり合える」

たくさんの人から受け取った暖かさのおかげで、いまはそう信じることができる。

 

ほんとうにありがとう。

 

僕はこれからも作品というラブレターを書き続け、あなたに届けます。

川口忠彦
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